埼玉医科大学国際医療センター

脳脊髄腫瘍科

准教授 鈴木 智成


胚細胞腫瘍には色々な種類の腫瘍があり、放射線と化学療法が非常に良く効きます。そのため、正確な診断と適切な治療を行うことが非常に重要です。


【胚細胞腫瘍とは】

 胚細胞腫瘍は10代のお子さんに多く生じる小児脳腫瘍の代表で、主に松果体部(図1)または鞍上部に発生します。(図2)男女比では男性に多く、特に松果体部に腫瘍ができるのは、ほとんどが男性です。また、この腫瘍は日本や韓国、台湾などの東アジアに多く発症するといわれ、日本では欧米よりも人口比で多くの患者さんがいます。

 胚細胞腫瘍はさらに細かく、ジャーミノーマ、奇形腫(未熟・成熟)、絨毛癌、卵黄嚢腫瘍および胎児性癌に分けられ、そしてそれらが混じった混合性腫瘍があります。基本的に化学療法と放射線治療が非常によく効きますが、それぞれの腫瘍によって治療の仕方が違うため正確な診断が重要です。


【症状】

 松果体の近くにできた場合、中脳水道という髄液の道を閉塞して水頭症を生じ頭痛や吐き気を生じます。水頭症が進行すると意識が悪くなるので緊急処置が必要です。また鞍上部の腫瘍では尿崩症といって尿がたくさんでてしまう症状が現れます。また大脳基底核部(図3)に生じると 半身の麻痺や不随意運動を生じます 。





図1:松果体部腫瘍図2:鞍上部腫瘍図3:大脳基底核部腫瘍


【治療】

 最初から開頭手術で腫瘍の摘出を行うこともありますが、腫瘍は脳深部の手術が難しい場所にできるため、合併症なく全ての腫瘍を取り除くことは難しい場合が多いです。そのため、まず腫瘍の一部を採取し診断を得て、その悪性度に応じた化学療法と放射線治療を行い、腫瘍を小さくしたところを手術で取り除くことも行われます。診断のための組織採取には、最近では神経内視鏡を用いた手術が多く行われるようになりました。松果体部の腫瘍で脳室が大きくなっているときには、神経内視鏡で水頭症の解除と組織の採取ができ、非常に有効です。そして病理診断にしたがい、どの化学療法を行うのか、どのくらいの量の放射線をどこに当てるのかということが決定されます。

 現在では、ジャーミノーマは9割の患者さんが治癒する可能性のある、予後良好群に属する腫瘍です。したがって合併症が少なくなるように、なるべく低線量の放射線治療と体に負担の少ない化学療法が行われます。

 奇形腫を含む混合性腫瘍は中等度悪性群と呼ばれ、ジャーミノーマよりも強い治療を行います。絨毛癌、卵黄嚢腫瘍、胎児性癌の成分が含まれる場合は、強い化学療法と脳と脊髄への放射線治療が必要になります。

 残存した腫瘍は、セカンドルック手術と呼ばれる治療後の二回目の手術で、可能な限りの摘出が行われます。


【今後の展望】

 現在、脳の胚細胞腫瘍でも遺伝子の解析が進み、どのような遺伝子の異常があるのかが調べられてきています。それらの結果により、新しい治療法の開発が進められおり、近い将来、より効果的で副作用の少ない治療が開発されることが期待されています。