国立成育医療研究センター 脳神経外科

医長 原 英


くしゃみをしたときに頭の後ろが痛くなるという症状が続いたら、もしかするとキアリ奇形が頭痛の原因かもしれません。

1.頭痛の原因

 最も緊急性のある頭痛としては、脳動脈瘤破裂や脳動静脈奇形からの出血、高血圧で脆くなった血管からの出血が原因となるくも膜下出血、脳内出血があげられます。今まで経験したこともないほどの強い頭痛が突然に起こるのが特徴であり、すぐに病院にいき対応する必要があります。

 2.頭痛の原因としてのキアリ奇形

 その他の頭痛の原因として、脳神経外科的な手術で治すことが可能な疾患としてキアリI型奇形による頭痛があります。キアリ奇形とは、小脳あるいは脳幹の一部が大後頭孔という頭蓋骨の下にある開口部を超えて脊髄の存在する脊柱管内に落ち込んでしまう病気です(図1)。キアリⅠ型奇形では大後頭孔から小脳扁桃と呼ばれる小脳の一部が5㎜以上下垂していることとされています。通常大後頭孔には延髄が存在し、その下の脊髄へとつながっていきます。延髄の周りには髄液のスペースがあって余裕があります。しかし、キアリ奇形では小脳がもともと延髄のある大後頭孔に落ち込んできますので、髄液のスペースがなくなり、落ち込んできた小脳により延髄が押され、頭痛などの症状を呈してきます。キアリI型奇形は1000人から5000人に一人の割合で起こり、中・高校生から40歳くらいの女性に多く発症します。

 キアリI型奇形による最も多い症状は後頭部・後頸部痛で6〜7割に認め、くしゃみをしたときに頭痛が起こるというのが特徴的です。これは、くしゃみをしたときに胸腔の圧が上がり、これと連動して頭蓋内の圧が上がり、これが大後頭孔での圧迫症状を悪化させるためと言われています。ほかにも胸腔の圧を上げるような動作、具体的には咳をしたときや笑った時にも頭痛が起こるとされています。



 キアリI型奇形の約半数に脊髄空洞症を伴うとされています。脊髄空洞症とは脊髄の中心に水がたまってきてしまう病気ですが、これが進行すると背骨が曲がってくる側彎という症状がでてきます。脊髄空洞症を伴うキアリI型奇形の約⅓に側彎があるとされています。キアリI型奇形の一番多い症状は頭痛ですが、進行すると他にも運動失調、中枢性無呼吸、飲み込みの障害、めまい、脊髄空洞症による手足の痛みやしびれ、脱力などが起こるばあいもあり、早めの対応が大事な場合も考えられます。

3.治療について

 手術では、後頭骨の一部と第一頸椎の後ろの部分を除去し、必要に応じて骨の下にある硬膜も広げます。これにより大後頭孔部に余裕ができ同部での圧迫の改善を図ります。術後に後頭部・後頸部痛は9割程度の例で改善します。また、頭痛以外の症状の進行を停止することができます。

 もし、くしゃみをしたときに頭の後ろが痛くなることが続いたら、一度脳神経外科の受診を考えてみてください。