帝京大学附属病院

脳神経外科

病院教授 小野田 恵介


 片側顔面に食事、洗顔などを誘因に起こる激しい痛みを三叉神経痛といいます。診断に苦慮し、どこに、何科にかかったらいいか悩まれる方も多いと思います。本稿では三叉神経痛の原因、治療についてご説明いたします。


 みなさん、もしくは周囲の方が顔が痛いと訴えられるのをみたことはありませんか。歯からくる痛みではないかということで歯科医院を受診し、処置を受けても改善せず診断に苦慮し、どこにかかったらよいか悩んでいる方をみることがあります。三叉神経痛はその特徴として、①右もしくは左一側顔面のみの痛みであること、②食事、会話、洗顔などで痛みが誘発されること、③発作的に電気が走るような痛みが生じることが挙げられます。激しい痛みのため、食事摂取が困難となり、特に高齢の方では若年の方に比べて、体重が減少し、低栄養、脱水などを引き起こし、寝たきりのような状況になり、さらに生命に影響を及ぼすことがあります。抑うつ状態に陥り生活の質が落ちてしまうことも見受けます。当初効果的であった鎮痛剤が徐々に効かなくなり、より効果を求めて多量に服用し、ふらつき、肝機能障害をきたし入院加療いたる場合もあり、できるだけ早期の適切な診断と治療は不可欠と思われます。


 最近、帝京大学脳神経外科三叉神経痛、顔面痙攣専門外来にこられた80代の女性の方ですが、ピーナツを食べたとき突然右の顎に激しい痛みが出現し、以降洗顔、歯磨きなどでも同部位に痛みが起こるようになり、近所のかかりつけの先生に鎮痛剤を処方してもらい何とか痛みはおさまったもののだんだん効果は減弱し、徐々に服用量が増量したとのことです。それに伴いふらつきなどがあったのですが痛みには代えられず我慢していたとのことでした。とうとう起き上がることができなくなり、総合病院内科に入院することになったとのことです。何とか回復し、当科に紹介になりました。治療法として放射線治療、神経ブロックがありますが根本的治療である手術を選択されました。80代ということで手術そのものの危険性はありましたが、無事終了し、手術直後より痛みは消失し、かなり満足され、退院されました。一ヶ月後、外来でお会いした時、体重がほぼもとにもどり、なんでも食べられると喜ばれておりました。また当分できていなかった洗顔、化粧もできることも喜びでありました。


 三叉神経痛の原因は90%が三叉神経に対する血管による圧迫であり、当科ではまずは画像診断(MRI・MRA)を行い、手に取るように血管の圧迫状況を詳しく捉えるようにしています。治療法として投薬治療、放射線治療、神経ブロック、手術が挙げられますが基本的に患者さんのご希望に沿って選択させていただいております。まずは取り急ぎ投薬治療を行い、効果が低下してきた段階で手術を考えるなど、いろいろな組み合わせも可能です。手術は圧迫血管を移動させるという根本的治療で、微小血管減圧術といいます。当科では手術は1時間30分、10日程度の入院で、手術翌日より自由に動くことができ、良好な成績を得てまいりました。全身麻酔下、耳の後ろを5cm切開し、五〇〇円玉程度の穴をあけてここより、手術用顕微鏡を用いて三叉神経まで到達し、責任血管を確認し、慎重に血管を移動させるというものです。手術のシェーマを図に示します。本手術の合併症として難聴があげられますが、聴性脳幹反応という検査を持続的にしながら行ない予防に努めております。


 以上のような顔面痛でお悩みの方はまずはご遠慮なく、お気軽に脳神経外科専門医の受診をお勧めします。特にご高齢の方では生命にかかわることもありますので早期の受診をお勧めします。適切な診断と治療で完治することが可能なのですから。