東埼玉総合病院付属清地クリニック

脳神経外科

馬場 元毅



Ⅲ動眼神経②
 前号では動眼神経が文字どおり眼球を動かしたり、上瞼を持ち上げたりする働きを持つことをお話しました。今回はもう一つの大事な働きである瞳孔(瞳)を収縮する働きについてお話します。
 (12種類の脳神経の全体図は「ぶれいん」128号P8をご覧になるか、当ホームページサイドメニューにある「脳神経のしくみと働き」をご覧になって下さい ※下図のバナーをクリック)


【動眼神経の働き(3):瞳孔の収縮】

 皆さんは目のいろいろな構造がカメラの構造と似ていることをご存知ですか。

 たとえば、カメラのレンズカバーは瞼[まぶた]、絞りは虹彩(後述)、レンズは水晶体、フィルムは網膜、というわけです(図1)。カメラの絞りの役目は、レンズを通してフィルム(デジカメでは撮像素子)に当たる光の量を調整することです。たとえば暗い場所では絞りを拡げないと真っ黒な写真になりますし、逆に明るい場所で絞りを拡げすぎると真っ白な写真になり、どちらも良い写真は撮れません。


 人間の目も同様で、もし非常に強い光が目に入ると、目を痛めて万一、失明することすらあります(図2)。目に入る光の量を調整するのが虹彩の役目です。虹彩は白目と黒目の間の部分で、日本人はだいたい焦げ茶色をしています。虹彩の中心部には円形の黒い開口部があり、これは瞳孔(いわゆる黒目の部分)です。


( 暗所 )( 明所 )

         

図2:カメラの絞りと虹彩( 瞳孔)の収縮


 虹彩の中には瞳孔の大きさを調整する2種類の筋肉(瞳孔を収縮させる筋肉と拡大させる筋肉)があります。このうち、動眼神経は瞳孔を収縮する筋肉を支配しています。まぶしい光を浴びると瞳孔は眼を守るために収縮して目に入る光の量を減少させます。一方、薄暗い場所では眼により多くの光を取り入れるために瞳孔は拡大します。

 ここで、皆さんにクイズを出します。いま、少し暗い部屋で、右側の目だけに光を当てた時、右と左の瞳孔はどうなるでしょうか。右の瞳孔は上述のとおり、収縮します。それでは左側はどうでしょうか?

 答えはちょっと不思議に思えるかも知れませんが、光の通路である視神経と、瞳孔収縮の指令を伝える動眼神経が両側とも正常であれば、左側の瞳孔も収縮します。なぜ左側の瞳孔まで収縮するのでしょうか?実は脳の中央部にある中脳という場所に瞳孔を収縮する中枢が左右に存在し、左右の中枢は互いにつながっています。このため、右眼からの光刺激は右だけでなく、左の瞳孔収縮中枢にも同時に伝えられます。こうして光を一側の眼に当てた時、その側だけでなく、反対側の瞳孔も収縮するのです。

 光を目に当てた瞬間に(反射的に)瞳孔が収縮する現象を対光反射といい、視神経や動眼神経の障害の有無をみるための大切な検査法です(図3)。皆さんも薄暗い場所で片手に手鏡を持ち、ご自分の瞳孔を鏡に映しながら反対の手に持った懐中電灯(ペンライト)で瞳孔を照らしてみると、瞳孔が一瞬のうちに縮小するのが観察できるはずです。


図3:
対光反射:正常の場合、一側の眼に光を当てると、その側の瞳孔だけでなく、反対側の眼の瞳孔も収縮します。


 次号では動眼神経が麻痺した時の症状をいくつか紹介します。また、眼球運動に関わる滑車神経と外転神経について短くお話します。