東京大学医学部附属病院長

脳神経外科

教授 齊藤 延人


● 沿革と組織の概要

 東京大学脳神経外科学教室は昭和26年に診療科として設置され、初代佐野圭司教授が昭和37年に外科学第三講座担任となり翌年に脳神経外科学講座と改名したことに端を発する我が国最初の脳神経外科学講座です。その後高倉公朋教授、桐野高明教授が教室の発展に尽力され、現在は四代目の齊藤延人が教室を主宰しています。脳神経外科の老舗として全国各地に多くの臨床家、研究者、指導者を輩出し、約四百名以上の同門会員を擁しています。

 現在、大学には教授、准教授、講師、助教で十五名のスタッフに加え、初期及び後期研修医が約十名、大学院生十五名、海外からの留学生が若干名います。外来は外来診療棟三階,病棟は入院棟Aの七階南にあります。



● 診 療

 外来診療は、月曜日から金曜日まで午前中に一般外来(新患、再来)を行い、さらに月・水・金に午前と午後に分けて専門外来を行っています。専門外来には脳腫瘍外来、NF・VHL外来、脳血管・動脈瘤外来、血管内治療外来、頭蓋底腫瘍外来、下垂体腫瘍外来、もやもや病外来、てんかん外来、顔面痙攣・三叉神経痛外来およびガンマナイフ外来等があります。平成28年度の外来患者数は延べ一万八千三百十一名でした。

 入院診療は、主に七階南病棟と四階のICUおよび二階南小児病棟等で行っています。月・水・金の朝8時からカンファレンスと回診が行われています。カンファレンスには、放射線診断医や放射線治療医も参加し、金曜日には地域医療連携部との合同カンファレンスも行っています。平成28年度の入院患者数は996例でした。手術件数は516件で、この他にガンマナイフ治療例が270件でした。手術の内訳は、脳腫瘍177件、脳血管障害49件、頭部外傷58件、脳脊髄奇形3件、水頭症69件、脊髄脊椎疾患7件、機能的疾患63件、血管内手術139件です。

 当教室で扱うことが多い疾患は髄膜種・神経膠腫・転移性脳腫瘍・神経鞘腫・聴神経腫瘍・下垂体腺腫・脊索腫・軟骨肉腫などの脳腫瘍と、脳動脈瘤・脳動静脈奇形などの血管障害、および顔面痙攣・三叉神経痛・難治てんかん・パーキンソン病などの機能的疾患です。各種疾患のバリエーションに富む点が際だった特色です。

 脳機能を最大限に温存するために、脳機能モニタリングや、術前・術中の脳機能マッピングなどを積極的に取り入れています。またや血管内手術などの最先端の技術を駆使して、手術の安全性を高める努力を続けています。

 頭蓋底腫瘍の手術では耳鼻科・形成外科との協力のもと、脊髄披裂・骨癒合症など小児奇形の治療では小児外科・形成外科との協力のもと合同手術が行われています。脳動静脈奇形については血管内手術による塞栓術とガンマナイフによる定位的放射線照射や開頭摘出術による合併治療が行われます。


● 研 究

 当教室では、病気の原因解明や診断・治療法の開発のために、基礎的な研究から臨床研究まで幅広く研究を展開しています(表)。詳細はホームページもご参照下さい。

■ホームぺージ
http://www.h.u-tokyo.ac.jp/neurosurg/

表.東大脳神経外科で行われている臨床研究の例

頭部外傷や脳虚血後の神経再生の研究
神経細胞移植の治験。
悪性脳腫瘍の遺伝子解析研究
腫瘍組織の遺伝子変異のシークエンス解析(IDH 遺伝子、TP53、ヒストン遺伝子等)や、染色体のLOH 解析、メチル化解析。
脳神経外科疾患の病理・遺伝子・ゲノム解析研究
von Hippel-Lindau 病(VHL 病)やNF2 などの家族性脳腫瘍、髄膜腫、もやもや病、海綿状血管腫、等
脳神経外科手術における脳機能画像の応用と3 次元手術シミュレーション
手術前に、MRI やCT、機能MRI, 脳磁図、脳白質画像などの画像を駆使して手術計画を立てる研究。
難治性てんかんに対する機能温存的・低侵襲的治療法の開発と評価
迷走神経刺激術(VNS)、焦点局在診断の精度向上、次世代型頭蓋内電極の開発等。
非侵襲的・侵襲的検査による大脳機能の解明
機能的MRI、脳磁図、NIRS を用いた大脳機能研究の他、当科の特色とも言える頭蓋内脳波を用いた脳機能研究。
ガンマナイフの治療成績に関する研究
日本で有数の症例数を誇るガンマナイフの治療成績などに関する研究。